2011年12月22日木曜日

★GNH(国民総幸福量)の計測

 先日の新聞に、GNP(Gross National Product 国民総生産)ならぬ、国民総幸福量(GNH: Gross National Happiness)のことが書かれていました。これはブータン国王のジグミ・シンゲ・ワンチュク氏が提唱したもので、同国ではこのGNHを増加させることが政策の中心となっているそうです。
 GNPは物質的な豊かさの指標となるものと考えられますが、GNHはそれでは計測できない心理的な要素が含まれます。(たとえばGNPの場合には、事故や病気など個人にとって幸福でないことであっても経済的な支出があれば加算されてしまう。)

 ブータンでは、このGNHを把握する方法として、国民の中から8000人を選定して、彼らに質問をし、各項目ごとにその数値を集計して地域ごとの幸福度の地図をつくるのだそうです。その項目とは、1.心理的幸福、2.健康、3.教育、4.文化、5.環境、6.コミュニティー、7.良い統治、8.生活水準、9.自分の時間の使い方、という9つの構成要素があります。こうして、同国では1961年からGNH増大の5カ年計画が始まり、現在では第十回目の5ヵ年計画が行われています。
 現在、同国では主として水力発電と観光収入が外貨の獲得(主としてインド側から)に寄与していますが、農業従事者は就業人口の66.6%と高く、同国には飢えた人は居ないらしいし食料は全て自給できています。そのためか、幸福と感じる人は全体の97%に達しているといいます。このGNHの考え方は中国でも採用する省が増え、欧米でも検討されるようになってきたようです。

 さて、こうした幸福の総量を考えた場合、日本はどうでしょうか。近年、高齢者福祉が充実していきましたが、まだ、孤独死とか世界トップレベルの自殺率(年間3万人)、都会の会社の中間管理者の精神病多発、失業率が高い、生活保護所帯の増加(200万人超)、食料自給率の低迷化等の問題が山積しています。もしGNH調査を行った場合に、幸福だと答える人はブータンの97%に対して何パーセントになるでしょうか。
 こうした問題は一朝一夕には解決できないかもしれませんが、やはり、日本も独自にGNHを増大させる方策を行ってゆくべきではないかと愚考する者です。もちろん、そのための指標は独自に開発しても良いと考えられるのです。

 具体的な方策は政治家にお任せするとしても、たとえば、以前に高齢者増加問題を考えました。
 ここで問題となるのは、高齢者は健康にも問題が生じるし、定年等で職を失い、再就職も簡単にはできないので、年金に頼らざるを得ないことです。そして年金にも問題があり、それだけで生活できる人ばかりではない(国民年金では小遣い程度)ということでしょう。
 この解決策として、定年の延長(65歳かそれ以上)または廃止と、高齢者の一日の労働時間の短縮(延長も可能)や休暇の増加(週3日とか4日等)があげられます。(以前にマクドナルドをはじめとする数社が定年の廃止や延長をおこないました。また、これとは逆の意味になるかもしれませんが、定年退職の60才以前の自由化(?)を行っている会社も多いようです。こちらは、会社で得た技能や能力と退職金を使って老後の生活設計を行いやすくするものと考えられます。)
 また、世の中の仕事の量を増やすために、可能な限り、パートタイム制を導入して、労働時間を細分化して多数の人達に分配する方法が考えられます。また、シルバー人材センター等の仕事量が増えれば良いのですが、そちらも採用人員の低年齢化をして、専門的な仕事の請負まで行ってゆく必要があると思われます。

 いずれにしても、どのような方策がどのような結果を生じるのか未知数の部分がありますが、望ましい方策をできる限り行って、その結果を見て良し悪しを判断するのも一案ではないかと思うのです。

 植木淳一

3 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

●補足です。
 職業選択の基準となる職業の分類ですが、シルバー人材の登用に対して、特別な分類方法が必要となるように思われます。つまり、求人広告にその職業の”性質”を明示する必要があるわけです。
 以下は、それを実行するための試案です。

★職業分類記号
 下記の①②③④⑤⑥の併記で表示される。

①職種管理区分
1-一般社員
2-技術・技能職社員
3-営業社員
4-中間管理職社員
5ートップ管理職社員
(3、4、5は通常フルタイム勤務になると考えられる)

②上記の特に①②の社員に対しての分類項目
A-フルタイム勤務(労働基準法に則った勤務時間:7.5時間)
B-午前中(4時間内勤務:8時ー12時)
C-午後(4時間勤務:午後13時ー17時)
D-残業勤務(17時ー21時)
E-夜間勤務(21時ー1時)
F-深夜勤務(1時ー5時)
G-早朝勤務(5時ー9時)

③手作業で持ち上げる加重最大値(kg表示)
0-筆記具程度のものしか持ち上げない作業
1-1kg以内
2-2kg以内
3-3kg以内



④精神的な作業量評価値
1ーほとんど精神的、頭脳的負荷がかからない作業(警備とかマンションの管理人など)
2ー少し精神的負荷がかかる作業(工場内での単純な軽作業)
3ー一般事務のような軽作業と同等の負荷
4ー電話での対人折衝のある作業
5ー直接的な対人折衝のある精神的負担の大きい作業
6ー相当な精神的・頭脳的ストレスがかかる作業

⑤仕事で歩き回る距離
1ー部署の部屋の中でのみの移動
2ー通常の建物内だけの移動
3ー大きな工場や敷地の中の移動が含まれる仕事
4ー一辺1kmを超える敷地や路上を動き回る仕事
5-上記を超えた距離を移動する仕事

⑥車、電車などの移動手段で動き回る作業を含む
1-それがない仕事
2-上記の作業が時々含まれる仕事
3-上記の仕事が常時含まれる仕事
4-航空機で移動する作業が含まれる仕事

 この表記法で分類すると、ビル内での監視作業は、1A0111となり、経理の事務を午前中行うパートタイムの作業は、2B0421のようになるでしょう。駐車場の管理を午後4時間行う作業は、1C3131で、スーパーマーケットの夜勤を夜間一夜(9時ー朝の9時まで)行う勤務は1EFG1131となります。また機械の設計などを行う仕事は、2A0422のように表記できます。

 これはひとつの案ですが、もっと工夫をすればより使いよく、わかり易いものができると思います。

 こうした作業の分類を設定することにより、お年寄りや身障者にもできる、簡単で体力をあまり使わない楽な作業を選び出すことが容易となります。

 植木淳一

Unknown さんのコメント...

●幸福度の指標つくり

①質問紙法
 これは意外と簡単ではあるが、個人の性格や態度により、真実の評価ができるかどうかわからない場合もある。しかし、国勢調査のときなどに、任意に紙面で回答を得る方法が安上がりで多数の調査が行える。たとえば、国民の1%の人数から回答を得ることも十分可能に思える。

 人生のいろいろな側面での幸福度や満足度を1から(3が普通)5までの五段階表示で答える
1.家庭
2.学校や職場
3.友人関係の数と満足度
4.夫婦関係
5.健康
6.個人的な自由時間
7.食事
8.睡眠
9.部屋
10.プライバシー
11.教育
12.収入
13.家具や嗜好品
14.衣類や装身具
15.地域との連帯
16.隣人との関係
17.市のサービス


上記、各々の項目に関して、特に問題があるかないかを別に回答する。
「例」1、家庭
         満足度{1,2,3,4,5}
 問題がある場合の難易度{1,2,3,4,5}

 1、はすぐに解決、
 2、は容易に解決できる。
 3、は解決可能。
 4、は解決に困難がある。または複数の問題が発生しているが個々には解決可能。
 5、解決が不可能に思える。どうしようもない状態。

 等。

 これには心理学者や社会学者の協力が必要だろうと思う。

 植木淳一

Unknown さんのコメント...

補足です。

 こうした国民の状態を政治家が知ったり、国民ひとりひとりの意見を聞くことは、現在の議会制民主主義ではあまり行われなくなっています。これは人口が多いからです。古代ギリシャでは国民が皆、一箇所に集まって議会を開いたそうですが、現代ではそうもゆきません。
 一方、現代では、インターネットなどの通信系が発達してきているので、こうしたデータ通信を使用して、電子会議やBBSシステムなどを利用して多くの人達が意見の交換をすることが可能となってきました。そのために、やり方によっては、選挙資格をもつ人達全員の参加した「国民投票」などもできるでしょう。
 最近では、ギリシャの債務問題から発したEU脱退か否かをめぐり、「国民投票」によりその是非を決した事件がありました。
 ところが、日本では「国民投票」がほとんど行われたことがありません。それだけの重要な課題がなかったからだということもあるでしょう。
 しかし、日本でも政治に関しての不審や人気の低迷などが問題となっている現在、今後はそうした国民参加の政治(時々国民投票により決する)の仕方も一考の価値があるのではないかと思うのです。国民もすべてを政治家に任せておくのでは面白くないと思うのです。これには長期化している不景気等の問題に対して、決定的な解決のできない政治に対する不満もあると思われます。

 過去には、政治家が行き詰まると議会解散と総選挙を行なってきました。それで政治や内閣の支持程度を国民に問うていたのです。これは大げさな出来事で、政治的な混乱だけでなく、場合によっては問題のすり替えや、争点のずれを生じる結果となるように思うのです。

 やはり、「民主政治」には国民の意見をできるだけ吸い上げ、それを政治に生かす努力が必要だと思われます。

 南北戦争当時の米国第16代大統領リンカーンは、ゲティスバーグ演説で「人民の、人民による、人民のための政治」を唱えました。これからは、この言葉をもっと現代的に行うべきではないかと考えるものです。
 現代では、電子機器やコミュニケーションの技術が発達してきているので、今後は政治に関しても、より多くの国民の意見が反映する理想的な社会の構築が可能となってきているのではないかと感じるのです。

 植木淳一